お灸(きゅう)って

お灸(きゅう)って
温灸・間接灸・台座灸
お灸って熱くないの?そんな事をよく聞かれます
お灸は火を使いますので、少なくとも冷たくはありませんよ
血行の悪いところにお灸をしますので、不快な熱さはなく
ほんわか温まり、とても気分の良いものですよ
場所によってはあつい熱いというより、チクリという感じです
このチクリ身体の機能を高める効果が、理由は後ほど

お灸って何で出来てるの?
お灸(きゅう)って
お灸の原料、草餅などに入っているヨモギです
葉の後ろが白く見えますが、ここがお灸の原料に
キク科ヨモギ属の多年草で、全国の野原や河川の土手などに自生

お灸(きゅう)って

お灸は、ヨモギの葉を乾燥させ、葉の裏に生えている絨毛のみを
選別して作られています
産地はほとんどが琵琶湖・伊吹山周辺や新潟です
6~7月の天気の良い日に収穫をし、3日ほど天日で乾燥させ
空気の乾燥した冬に石臼・篩(ふるい)・唐箕(とうみ)にかけ
不純物が入らないように精製して出来上がり
精製の度合いで高級になり、最高級品はヨモギの重量の3%ほど

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左から ヨモギ 灸頭鍼・地熱灸用のもぐさ 上質なもぐさ

どうしてお灸をするの?

1. 有効成分(シネオール)による血流改善
お灸(きゅう)って
シネオール (cineol)、別名ユーカリプトール (eucalyptol)
ヨモギに含まれる有効成分の精油で、樟脳に似たさわやかな匂い
ローリエ、バジリコ、ローズマリー、セージなどの葉からも抽出出来る

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足裏のお灸は、足の冷えやしびれ、腰痛、頭痛などにも効果あり
シネオールには血管拡張作用や、自律神経の乱れを調整する
血行不良で組織の温度が下がっているような場所にお灸をすえて
血行を回復
させます

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近赤外分光法を用いた鍼灸刺激による筋血液量測定についての検討
第 11 回医用近赤外線分光法研究会
お灸により温められると、患部周辺の血管が拡張して血流が上がります
鍼の血行促進効果と比較して灸の効果は、1.5倍ほど血流量が増加

2. 温熱効果による血流改善

お灸(きゅう)って
血液の粘性と温度

もう一つがお灸が燃えることによる、温熱効果
体温の上昇血液の粘性が低下して、血行を良くします

お灸(きゅう)ってお灸(きゅう)って
お灸を1壮据えた場合       お灸を3壮据えた場合
お灸を多く据えた方が組織の温度低下が少ないのが分かる


3. ヒートショックプロテインによる免疫機能の亢進
お灸(きゅう)って
全身加温でHSPが増える
熱ショックタンパク質(Heat Shock Protein, HSP)は,全ての細胞中
普遍的に存在するタンパク質で、これらは種々の機能を持っています
細胞が熱・寒さ・酸素欠乏などの様々な環境のストレスにさらされると
発現量が増えるので,ストレスタンパク質としても良く知られています
HSPは分子量の違いにより、Hsp47、60、70、90などがある

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Hikeshi輸送経路のモデル
HSPは,タンパク質の細胞内輸送を行い,古くなったタンパク質を分解へと
導き,疾患細胞において,細胞表面にタンパク質の特定の部位を提示して
免疫系に認識されるよう働きかける役割を持つ
HSPは、血中に吸収され,各種幼弱白血球を増加させ
免疫機能が亢進する

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HSP70は抗細胞死作用や抗炎症作用を持ち、アルコールや
紫外線など種々のストレスに対し、細胞を保護するため
HSP70誘導剤を胃粘膜保護薬などや化粧品へ応用研究がされている
皮膚のケラチノサイトにHSP70が増えることで紫外線依存の傷害
(細胞死、炎症反応、DNA傷害)が軽減することや
メラノサイトにHSP70が増えることでメラニン産生が抑制されること
HSP70がシミ形成を抑制することが報告されている
皮膚をお風呂で温める事で、HSP70が上昇し、シワ形成が抑制される
神経とグリア細胞にHsp70を過剰発現させると虚血による損傷が軽減される

人の足に対する局所熱処置の、筋交感神経の活動低下について
Takahashi N. et. al. Eur J Appl Physiol. 2011 Sep;111(9)

どんな症状にお灸をするの?
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お灸は身体が弱くなっている虚症
実証と虚症の中間症の方に行う事が多い

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陰陽のバランスの崩れで不調が発生する

実証の場合
過剰な寒熱の病邪を除去し、バランスを回復させる
鍼治療で外邪を取り除く、瀉(しゃ)法が向いている

虚証の場合
虚証の寒熱は、陰陽の不足でバランスを崩すことによる
不足を補い陰陽のバランスを保てば、寒熱は除かれる
虚証の寒熱は内傷病に多く見られ、治療原則は補法で
お灸による補法が向いていることが多い

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以前の記事 詳しくは虚 症

お灸をすると、どうなるの?

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身体に不調がある時には、ほとんどが交感神経が優位
ストレスなどで交感神経が優位になると四肢末端、肘、膝より下
消化管の緊張が高まり、血流が低下していきます

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お灸などで末梢血管の血流をよくすると、緊張しているときに働く
交感神経の緊張が緩み、副交感神経が働きやすくなります

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交感神経と副交感神経のバランスが大事
お灸をする時には、交感神経が優位になっている時や
自律神経の失調や疲弊しているときに主に使われます
健康を維持するには、自律神経のバランスが重要です

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リラックスしたときに働く副交感神経が優位になると、色々と良い事が

・ 心身ともにリラックスして、不安感も減る
・ 消化酵素やホルモンの分泌が良くなる
・ 消化機能が高まり、食欲が出たり、排せつしやすくなる
・ 手足が温かくなり、呼吸も深くなる
・ リズムがゆっくりしてきて、気持ちの抑えが利くようになる

灸の歴史
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黄帝内経

灸の起源は約三千年前の古代中国の北方地方において発明され
「奏の時代」2200年前の書物、黄帝内経にも灸に関する記載がある

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寒い中国北方民族は、熱の豊富な赤ん坊から徐々に冷え固まり
年老いて死を迎えると考えていました
熱の減少を抑える一つの方法として考えられたのが、お灸です

日本には西暦500年ごろ、仏教とともに朝鮮半島を介して伝わった

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以前の記事 鍼(針、はり)って
もご覧ください

お灸に不安感をお持ちの方も、少しは払拭できたでしょうか?
お灸には良い事がたくさんありますので、安心してくださいね


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ヨモギにも、効果があるの?

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ヨモギ 生薬名は艾葉(ガイヨウ)

成 分 タンニン類(ジカフェオイルキナ酸、クロロゲン酸)
    精油(シネオール)など
薬 理 腸管、心臓運動を抑制、呼吸促進、血圧降下
     毛細血管の透過性を抑制、抗酸化作用
運用のポイント
 ・ 止血作用 虚血性の出血性疾患(子宮出血、血便、血尿、吐血)
 ・ 安胎作用 冷えによる腹痛を治し、流産を予防する

ヨモギは食用の他、健胃薬や止血、鎮痛剤としても民間薬に利用
ハーブの女王とも言われ、葉緑素、Ca、鉄などが豊富
私も胃が冷えているとき、指先ほどの艾を服用しても効果十分
子供のころに鼻血を出したら、ヨモギを揉んで鼻に詰めろと
止血効果があるので、まんざらでも無いようで
代表方剤 芎帰膠艾湯(活血剤) 血虚 易皮下出血 痔出血

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カワラヨモギ 生薬名は茵蔯蒿 (いんちんこう)
カワラヨモギの頭花も生薬として使われています
黄疸治療、利胆作用、消炎、解熱作用、利尿作用
代表方剤 茵蔯蒿湯 頭汗 便秘 黄疸 肝炎 口渇 尿不利


ヨモギの栄養成分
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食品としてよもぎを見てみると、緑黄色野菜以上に身体に良い
栄養素を豊富に含んでいる
よもぎにはビタミンA効力だけでなくカルシウムや鉄分など
微量栄養素がバランス良く豊富に含まれている

ヨモギ精油の有効成分
・ 1.8-シネオール
精油に含まれる芳香成分の一つで、オキサイド類(酸化物類)に分類
リラックスする香りで、鎮静効果がある
去痰、抗菌、抗ウイルス、抗炎症、免疫調整作用、収斂、止血
筋弛緩、抗カタル、白血病細胞を殺す作用を持つ

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中平比沙子ほか(富山大学医学部),アロマテラピー学雑誌.9(1),2009.

A群は感染7日前から直前までの、予防のみの芳香を行ったグループ。
B群は感染時から感染8日後までの、感染後のみの芳香を行ったグループ。
C群は何も芳香しなかった、対照とするグループ

ユーカリに含まれている精油成分はヨモギに含まれる成分と同じく
シネオールが70%~85%

・ α-テルピネオール
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精油成分α-テルピネオールとユーカリプトール(シネオール)は微生物増殖を
阻害し、 α-テルピネオールの抗菌活性は、抗真菌剤、クロトリマゾールと同等
マウス膣組織において、ユーカリプトールとαテルピネオールは
細菌性膣症(ガードネラ)とカンジタ菌(C.アルビカンス)の菌を
優位に減少させた

炎症誘発性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-αの)、COX-2、iNOS
NF-κBの活性を阻害し、抗炎症性サイトカインIL-10の発現を増加
αテルピネオールが最も強力に炎症誘発性サイトカインと
NF-κB活性の発現を阻害した

α-テルピネオールは、膣の病原体の増殖とNF-κBの活性化​​を阻害し
細菌性膣炎や外陰膣カンジダ症を改善する
Trinh HT et. al. Planta Med. 2011 Dec;77(18):1996-2002.
ヨモギの精油成分
主な芳香成分 1.8-シネオール35%
          ボルネオール29%、カンファー21%
・ ボルネオール
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ボルネオールは竜脳とも言われ、墨の香料や漢方薬の生薬として
仁丹や救心で配合され、意識障害、熱性痙攣、咽喉痛、歯痛
眼科疾患などに用いられているようだ
天然のボルネオールは大変に貴重なので、カンファーから合成されている
抗菌、抗ウイルス、緩和、 免疫強化、沈静、強壮、中枢神経の興奮作用
ボルネオールはケンフェロールの血液脳関門の透過性を大きく向上させる
効果を持ち、アルツハイマー型認知症の対策として効果を期待される
Zhang Q et. al. J Ethnopharmacol. 2015 Mar 13;162:270-7


・ カンファー
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日本画の防虫剤として使われることのある樟脳(カンファー)
かつては強心剤としても使用されていたため、カンフル剤の語源に
血行促進作用や鎮痛作用、消炎作用などがあるため湿布の成分
として使用されている


テルペン類
・ α-ツジェン(α-thujene)
・ α-ピネン(α-pinene)
・ カンフェン(camphene)
・ サビネン(sabinene)
・ β-ピネン(β-pinene)
・ ミルセン(myrcene)
・ リモネン(limonene)
・ 1,8-シネオール(1,8-cineol)
・ p-シメン(p-cymene)
・ α-ツヨン(α-thujone)
・ β-ツヨン(β-thujone)
・ カンファー(camphor)
・ リナノール(linalool)
・ テルピネン-4-オール(terpinen-4-ol)
・ α-テルピネン(α-terpineol)
・ ボルネオール(borneol)
・ 酢酸ボルニル(bornyl acetate)
・ ゲラニオール(geraniol)
・ オイゲノール(eugenol)
・ カリオフィレン(caryophyllene)
・ γ-カジネン(γ-cadinene)

フラボノイド類
・ ケンフェロール 3,7-ジメチルエーテル(kaempferol 3,7-dimethyl ether)
・ ケルセチン(quercetin)
・ ケルセチン 3,3'-ジメチルエーテル (quercetin 3,3’-dimethyl ether)
・ メルセチン 3-ジメチルエーテル(quercetin 3-dimethyl ether)
・ ケルセチン 3,7,3-トリメチルエーテル(qurcetin 3,7,3’-trimethyl ether)
・ クエルセタゲチン 3,6,7,3'-テトラメチルエーテル
  (quercetqgetin 3,6,7,3’-tertramethyl ether)
・ クエルセタゲチン 3,6,7,3',4’-ペンタメチルエーテル
  (quercetqgetin 3,6,7,3’,4’-pentamethylether)

ポリフェノール類
・ コーヒータンニン(caffetannin)
  3,5-ジカフェオイルキナ酸(3,5-dicafe-oylquinic acid)
  3,4-ジカフェオイルキナ酸(3,4-dicafe-oylquinic acid)
  4,5-ジカフェオイルキナ酸 (4,5-dicafe-oylquinic acid)
・ クロロゲン酸(chlorogenic acid)

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